JIS X 8341-3改正の意見受付公告に当社の意見を提出しました。

日本工業標準調査会より、ウェブアクセシビリティJIS(JIS X 8341-3)の改正原案が意見受付公告として出されましたので、改正JIS原案に対して当社の意見を提出しました。

改正の概要

この規格は、高齢者及び障害のある人を含む全ての利用者が,使用環境に関係なく利用することができるように,ウェブコンテンツが確保すべきアクセシビリティ基準について規定したものであり、最近の生産及び使用の実態を踏まえて、規格内容の充実を図るため、改正を行うものです。

主な改正点と問題点は、次のとおりです。

  • W3C勧告の「WCAG 2.0」に対応した国際規格「ISO/IEC 40500:2012」に一致させ国際的な適合性証明スキームを導入することである。しかしながらJIS独自の要求事項(箇条6及び箇条8の該当箇所)は、引き続き推奨事項として附属書JA及びJBに残し課題を内在させたものになっている。

当社は国際規格であるISO/IEC 40500:2012及びJIS X 8341:2010の第三者認証機関として、パブリックコメントでこの国際的な適合性証明スキームに重大な影響を及ぼす問題点を指摘するものです。

 

当社の意見

意見の概要

JIS独自の要求事項(箇条6及び箇条8の該当箇所)を引き続き推奨事項として残すことを取りやめ、国際規格「ISO/IEC 40500」に一致させ、国際相互認証を可能とする本JIS改正の本来の意義を貫くべきである。

意見

JIS Q 17020(ISO/IEC 17020)に基づくJIS X 8341-3:2010,ISO/IEC 40500及びWGAG2.0の検査機関の認定を受けた検査機関として意見を申し上げる。

本JIS改正原案は,国際規格「ISO/IEC 40500:2012」と一致し,国際相互認証に課題であった適合要件が明確となったことを歓迎する。

改正JISに推奨事項として残されている付属書JA及びJBのJIS独自の要求事項は,WCAG2.0を参考に,日本が業界団体とともに規格を満たす取組方法に関する事項を策定した内容である。ウェブ制作関連業界及びウェブサイト管理者が取組べき事柄を分かりやすく記述しており,日本におけるウェブアクセシビリティ推進の一役を担ったと評価される。

しかし,ウェブ技術及び利用者環境が進化するスピードは速く,WCAG2.0の規格を満たす技術や取組方法はタイムリーな更新が必要であり,基準を規定する規格の内容に含めるには適さない情報である。
そのため,WCAG2.0では,規格を理解する補足情報や技術情報についてはWCAG2.0 関連文書をタイムリーに更新して提供することで対応している。
WCAG2.0及び関連文書は,5年を経過した現在でもJIS独自の要求事項を採用していない。WCAG2.0及び関連文書が,JIS独自の要求事項は提供する必要性が無いと判断した結果と考える。

以上を踏まえ,国際規格のWCAG2.0が必要性を認めていない内容を,国際規格に一致させる改正JISの推奨事項として残すことは,本JIS改正の目的に矛盾するので取り止めるべきである。

また,付属書JA及びJBのJIS独自の要求事項には,公正であるべき規格にも拘わらず購入者に不利となる問題などがあり,第三者の立場で行う適合性評価業務に障害となるため,改正JISに推奨事項として残すことは適切ではない。

以下に理由及び指摘する問題について述べる。

  1. 「ウェブページ一式」の取り扱いに関する問題について

    「ウェブページ一式」を代表する一部のウェブページを選択して試験を行い「ウェブページ一式」の検査結果とする。また,この試験結果を公開して「ウェブページ一式」が規格を満たしたと表明する方法は,検査業務の負担が大幅に軽減できるので供給者(第一者)には有利である。しかし,購入者及び利用者(第二者)が知らずに不適合なウェブページを購入または利用する可能性が高く不利となる。公正であるべき規格が供給者が一方的に有利となる方法を推奨すべきではない。
    現状,「ウェブページ一式」単位で「JIS X 8341-3:2010等級AA準拠」と表明する「ウェブページ一式」において,規格を満たしていないウェブページが多く見つかっている。これらはJIS規格の信頼性を著しく損なう問題である。
    改正JISの箇条5.「適合要件」は「ウェブページ全体」(「ウェブページ全体」とは,「ウェブページ単位」である)に対するものだけと規定している。改正JIS箇条5.の「適合要件」に基づき適正に「ウェブページ単位」に検査及び「適合表明」をすれば上記の様な問題は発生しない。
    改正JISの付属書A(規定)用語集A.65で「ウェブページ一式」を定義しているのは,JIS規定2.4「ナビゲーション可能のガイドライン」,規定3.2「予測可能のガイドライン」の個別規定で使用するためである。
    ランダムにサンプリングしたウェブページを試験して「ウェブページ一式」の検査結果とする方法は,サンプリング率の定義もなく供給者の自由裁量が可能であり,購入者及び利用者に不利な方法であることに変わりない。
    試験結果を表示するだけで,適合表明をする意味ではないとの意見もあるかと思うが,「ウェブページ一式」の試験結果表示例は,改正JIS規定5.2「適合表明」を行う規定にほぼ同一であり,購入者及び利用者に適合表明と判断して欲しいとの意図が感じられる。

  2. 適合性評価(http://www.jisc.go.jp/acc/index.html)について

    この度の改正でJISが国際規格と一致するので,供給者及び購入者(利用者)には適合性評価の認識と理解が今まで以上に求められる。
    適合性評価とは,日本工業標準調査会が定義するように,供給者または購入者とは無関係な第三者の資格を取得した機関が行うこととなっている。資格の取得には,対象規格及びJIS Q 17020:2012「適合性評価‐検査を実施する各種機関の運営に関する要求事項」に基づく認定機関の審査を受けなければならない。

    • 「検査」と「試験」の使い分けについて

      適合性評価機関の審査認定には,検査機関(JIS Q 17020:2012)及び試験所・校正機関(ISO/IEC 17025)などがある。本JIS要件は達成基準で目視による確認が必要であることから,認定機関が検査機関の審査が必要と判断した。そのため,改正JISで取り扱う用語は,「試験」・「試験結果」ではなく,「検査」・「検査結果」を用いることが望まれる。

    • 適合表明について

      供給者が自ら試験した結果を基に,「ウェブページ一式単位」で「JIS X 8341-3:2010等級AA準拠」と規格を満たしたと表明することは国際相互認証の制度上問題となり得るので推奨すべきではない。

  3. ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)のガイドラインについて

    WAICは,本JIS改正原案の策定と改正の申し出を行うなど,日本における業界団体の指導的な立場で活動しており,ウェブアクセシビリティ推進の一役を担っていると評価する。
    付属書JA及びJBのJIS独自の要求事項には,WAICの「ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン」「試験実施ガイドライン」を参考にするよう推奨している。
    WAICはこの他にも「規格対応度表記ガイドライン」,「規格対応発注ガイドライン」などを策定して業界に提供している。改正JISが,付属書JA及びJBによりWAICのガイドラインを推奨することは,WAICが策定している他の各種ガイドラインについても推奨することになる。
    しかし,公正であるべきJISは,業界団体の活動やガイドラインとは一線を画すべきである。そうでないと,供給者(第一者)または購入者(第二者)とは無関係である第三者としての適正な検査及び適合性評価が困難となる。
    以下にWAICが提供するガイドラインが適合性評価業務に影響を与えている問題について述べる。

    • 「ウェブコンテンツのJIS X 8341-3:2010対応度表記ガイドライン2010年8月版」

      同ガイドラインは,規格対応度の表記用語として「適合」に加え,「準拠」「一部準拠」「配慮し試験」「配慮」を独自に定めている。
      JIS規格では規格を満たした表明に使う用語は「適合」である。WAICの定めた「準拠」は「適合」と同一である。自己適合宣言ができないとなっているが,「適合」と同一であれば自己適合宣言は可能であるので,できないとする理由は不明である。
      総務省の「みんなの運用モデル」が本ガイドラインを参考にしており「JIS X 8341-3:2010等級AA一部準拠,または準拠」と規格対応表明する公的機関も多い。
      検査機関となり適合性評価を求められる時に「準拠」または「一部準拠」の使用を求められるが,検査機関が認められている規格対応度の用語は「適合」のみであり適合性評価業務に支障となっている。
      JISが,特別にWAICが定めるこの対応度表記と取扱いを認めているのであれば,認めた経緯と,「準拠」または「一部準拠」の取扱い基準等についての情報を求める。

    • 「JIS X 8341-3:2015」試験実施ガイドライン

      付属書JB「試験方法」の注記として,WAICの「JIS X 8341-3:2015」試験実施ガイドラインを参考にする記述があるが,現時点で該当するガイドラインは存在していないので意見を出すことはできない。

  4. 意見の補足

    以上のとおり,付属書JA及びJBのJIS独自の要求事項を引き続き推奨事項として残すことを取りやめるべきと意見をした理由は,付属書JA及びJBの内容が不備と判断したからであり,改正JISを正しく理解し運用するための付属情報が必要ないと意見しているわけではない。
    古いウェブページなどを含む全てについて規格を満たすのは供給者に過剰な負担を強いる可能性があり現実的では無いと考えている。
    そのため,改正JIS箇条5.「適合要件」に基づいた付属情報を提供するのは改正JISを正しく運用するために効果的であると考えている。

    例えば,改正JISの5.2「適合表明」は任意となっているが,積極的に行うことが改正JISを正しく運用させる上で効果的である。以下に一例を述べる。

    • 検査を行ったウェブページの検査結果情報(適合または一部不適合)を積極的に表明して,購入者(利用者)に情報を提供することが望ましい。
    • 検査を行うウェブページの選択においては「ウェブページ一式」を代表する以下のウェブページを優先して検査することが望ましい。
    • 検査の結果,全ての規格を満たした場合は「適合」(*注),一部規格を満たしていない場合は「一部不適合」として検査結果を公開して表明することが望ましい。

    (*注)WAICでは「適合」は認証機関が存在しないので使用することはできないとしているが,認証機関でなくても「検査の結果適合している」と表明することは可能である。ただし,認証マークの使用,適合証明書の発行により国際相互認証を得る,検査結果の保証を求める場合などは,認証機関でなければできないだけである。

以上