47都道府県19政令指定都市のウェブアクセシビリティ調査結果の発表
2011年12月20日
NPO法人ジェイシィアイ・テレワーカーズ・ネットワーク
(理事長:猪子和幸、本部:徳島県鳴門市、以下JCI)と株式会社インフォ・クリエイツ(社長:加藤均、本社:東京都渋谷区、以下IFC)は、2010年8月に改定されたウェブアクセシビリティ規格JIS X 8341-3:2010(以下JIS:2010)に基づく47都道府県19政令指定都市のウェブサイトのトップページ調査を協力して行った結果を発表します。
JCIは障害者を中心に在宅で就業するICT(Information and Communication Technology)人材育成活動を2000年より開始し、要約筆記、PC操作、ウェブアクセシビリティ診断技術などの分野の人材育成を行っています。
IFCは、2000年よりウェブアクセシビリティ推進活動を開始し、診断プログラムの開発、2004年JIS制定ワーキンググループに参加、2005年総務省アクセシビリティ研究会に構成委員として参加、在宅就業者支援活動を行っています。
両者は、アクセシビリティ規格の改定を機に、JIS:2010の検査要件である、目視・操作検査について47都道府県、19政令指定都市のウェブサイトのトップページ(合計66ページ)を対象に行い、2004年から行ってきた診断プログラムによる診断結果を含め、より正確に地方自治体のウェブアクセシビリティ状況を確認することにしました。
JCIが育成したウェブアクセシビリティ診断技術者31名(障害者を含む)が、JIS:2010の達成等級「AA」の達成基準38項目について、IFCが開発したJIS:2010適合判定のためのウェブアプリケーション・プログラム「JIS:2010判定ツール」が検知した判定個所を目視・操作で判定する方法で調査を行いました。達成基準38項目の判定は、197種類の実装方法を1件ごとに、実装方法が適用されるか、適用の場合、実装方法に問題が無いか、を確認して判定結果を記録する手間のかかる作業で、合計66ページで286,694カ所を対象としました。
判定には、画像に簡潔で的確な代替テキスト(視覚障害者に提供する情報)が提供されているかなど、ウェブサイトの情報提供意図を理解する基本的な技術や知識を活用する内容から、CSS(Cascading Style Sheets)やJavaScriptなどの高度な技術に基づいて判断する内容まで、多種多様な技術と知識が必要です。しかし1人ですべての項目を診断できる技術者は少ないため、JIS:2010判定ツールを利用して、さまざまな得意分野を持つ技術者が協力して判定を行いました。
診断結果概要
- ウェブサイト全ページのアクセシビリティプログラム診断結果およびトップページの目視・操作判定結果の両方で上位に入ったウェブアクセシビリティに配慮している優秀な自治体(順不同)は下記4自治体でした。
- (ア) 千葉県
- (イ) 神奈川県
- (ウ) 大阪市
- (エ) 新潟県
- 2006年~2010年のウェブサイトプログラム診断結果(政令指定都市は2~3年間)
- (ア) 都道府県/政令指定都市ウェブサイトのページ数は、平均3.6万ページ。(図-1)
2006年は自治体の間でページ数に比較的大きなバラツキがみられましたが、2010年ではその差も小さくなりました。(図‐2)
- (イ) ページタイトル、言語属性などの問題を含む不良ページが占める割合(ページ不良率)は、2006年に100%でしたが、2010年には60%に減少。(図-3)
視覚障害者の利用する読み上げソフトウェアの言語対応に必要な言語属性が欠落、またはブランク(指定されていない)問題が最も多く、全ページの24%。
JavaScriptを利用していない利用者向けへの対応不備問題が次に多く、全ページの22%でした。
- (ウ) 言語属性、ページタイトルなどのページ品質ランキングで見ると、(1)京都市、(2)佐賀県、(3)新潟県、(4)大阪市、(5)さいたま市でした。(表‐1)
- (エ) 画像などの非テキストコンテンツに必要である代替テキストが欠落またはブランク(指定されていない)問題は、2006年に全ページ数の3.3倍でしたが、2010年は1.5倍となり、改善されました。(図‐4)
- (オ) 画像などのコンテンツ品質のランキングでは、(1)京都市、(2)鳥取県、(3)新潟県、(4)相模原市、(5)石川県でした。(表‐2)
プログラム診断は、プログラムが問題の有無を判定するため、全ページを対象に行えました。
プログラム診断の結果は、問題のある個所を正しく検出していますが、問題のある個所以外のすべての個所が問題なしとは判定できません。例えば、言語属性は記述されているが、その内容が正しい言語を定義しているか、画像に代替テキストが記述されているが、その内容が正しいかなどの判定はプログラムで行うことはできません。この判定には目視・操作が必要となります。
- 2011年10月~11月の期間に行ったJIS:2010に基づく目視・操作判定結果
- (ア) JIS:2010達成等級AAを基準に、都道府県/政令指定都市ウェブサイトのトップページを目視・操作で判定調査しました。
- (イ) 適合(達成度100%)【◎】5点、達成度50%以上【○】3点、達成度50%未満【△】1点、不適合(達成度0%)【×】0点、として採点した結果、平均3.7点となり、最高点は4.2点、最低点は3.2点となりました。まだ完全とは言えませんが、適合に近い良い結果となりました。
- (ウ) 上記(イ)の配点で全判定結果を採点し、高得点を得た自治体は次のとおりです。(1)千葉県159点、(2)静岡市157点、(3)神奈川県156点、(3)山口県156点、(4)浜松市155点、(5)大阪府153点。以下トップ10は、(表‐JIS X 8341-3:2010 判定結果一覧 ランキングTop10)でご確認いただけます。
- (エ) 不適合の判定が多く見られたのは次の達成基準です。
【A】
7.4.1.1構文解析に関する達成基準
7.1.4.1色の使用に関する達成基準
7.1.3.2意味のある順序に関する達成基準
7.4.1.2プログラムが解釈可能な識別名、役割及び設定可能な値に関する達成基準
【AA】
7.3.3.3入力エラー修正方法の提示に関する達成基準
7.1.4.5画像化された文字に関する達成基準
7.1.4.3最低限のコントラストに関する達成基準
- (オ) 達成基準項目中で問題が見つかった項目には、新たにJIS:2010が数値による検証を求めた項目と、プログラムで簡単に検証ができる項目も含まれていました。
- (1) JIS達成基準番号7.4.1.1構文解析に関する項目がほとんど不適合と判定されました。この項目はW3C
が公開している構文チェックサイト
に対象ページのURLを入力することで判定できます。
- (2) JIS達成基準番号7.1.4.1色の使用に関する達成基準は、JIS:2010で新たに色のコントラスト比の数値が定められました。これはロービジョンの利用者向けの判定項目で、プログラムで基準の数値であるかどうか判定します。予測されたことですが、この項目には多くの問題が見つかりました。
- (3) JIS達成基準番号7.3.3.3入力エラー修正方法の提示に関する達成基準の項目でも多くの問題が見つかりました。この項目についてはほとんどのトップページに掲載されているウェブサイト内検索に問題として見つかっています。
目視・操作による判定では、判定者が情報の掲載意図を考慮して、利用者に情報が正しく提供されているのか、JIS規格で定められた基準でページが制作されているか、を判断する必要があります。そのため判定者には一定の技量が求められます。
今回の判定を担当した人の数は合計31名、全員がアクセシビリティに関するプログラム診断経験を持つ人たちです。しかし目視・操作による判定では、ウェブサイトの情報掲載意図を理解して判定するようになり、色のコントラスト比を確認するなど、新しい分野に挑戦しました。判定結果をウェブサイトの所有団体の皆様に広く公開し、本調査結果に対するご意見を集め、判定者のさらなる技量向上と理解力向上に役立てたいと考えています。