Webアクセシビリティとは(要約)

Webアクセシビリティとは、年齢や障害の有無、利用環境に関わらず、誰もがWebサイト上の情報やサービスを支障なく利用できる状態のことです。近年は障害者差別解消法の改正により民間企業でも対応(合理的配慮の提供)が義務化されるなど、すべての企業にとって欠かせない取り組みとなっています。

誰もが利用できる情報バリアフリーの考え方

アクセシビリティとは、年齢や障害の有無、利用環境などに関わらず、誰もが必要な情報やサービスを利用できる状態を指します。Webアクセシビリティとは、その考え方をWebサイトやWebサービスに適用し、誰もが情報を正しく受け取り、迷わず操作し、目的を達成できるように整える取り組みです。

街を歩いていると、スーパーや駅の階段横にあるスロープや、歩道・プラットホームに敷かれた点字ブロックをよく目にします。これらがあることで、車椅子を利用する方やベビーカーを押す方がスムーズに移動でき、目の不自由な方が白い杖を使って安全に通航できるようになります。

このような工夫は、日本では身近な言葉として「バリアフリー」と呼ばれることが一般的です。アクセシビリティは、このバリアフリーの考え方をさらに広げ、「最初から障壁(バリア)を作らず、誰にとっても利用しやすい状態をあらかじめ整えておく」という包括的な視点を含んでいます。

アクセシビリティは、英語の「accessible」に由来する言葉です。「access(近づく・利用する)」と「able(〜できる)」が組み合わさったもので、文字通り「利用できる」「近づきやすい」状態を表します。 Webアクセシビリティとは、この考え方をWebサイトやWebサービスに当てはめたものです。視覚障害のある方や加齢で見えづらさを感じる方、音が聞き取りづらい方、怪我などで一時的に手が使えない方など、多様な状況にあるユーザーが等しく情報を受け取り、快適に操作できるよう配慮することを意味します。

このように、Webアクセシビリティは一部の方だけに向けた特別な対応ではなく、あらゆる利用者がストレスなく情報へ到達できるようにするための、Webサイトにおける基本的な品質要件といえます。

なぜWebアクセシビリティが求められているの?

インターネットが生活やビジネスに不可欠な社会インフラとなった現在、Webアクセシビリティが急速に重要視されている背景には、主に3つの理由があります。

  • 超高齢社会の進展と利用者の多様化子どもから高齢者まで幅広い世代が日常的にインターネットを利用するようになりました。特に高齢化が進む日本においては、加齢に伴う視力低下(白内障や老眼)や操作性の低下に対応したWebサイトの設計が不可欠です。
  • 多様なデバイスと閲覧環境(支援技術)の広がりパソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなど閲覧端末が多様化したほか、視覚障害のある方が利用する「画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)」や、マウスが使えない方が行う「キーボードのみでの操作」など、情報を受け取る手段そのものが多様化しています。どのような環境からアクセスしても、同じように機能・情報が利用できる配慮が求められています。
  • 法改正やガイドラインによる社会的要請行政機関向けに策定された総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」をはじめ、2024年4月に施行された改正障害者差別解消法により、民間企業においても障害者への「合理的配慮の提供」が義務化されました。Webサイトにおける情報提供もこの配慮の対象と捉えられており、法令遵守(コンプライアンス)の観点からも対応が急務となっています。

このように、インターネットを通じて誰もが等しく情報を取得・利用できる環境を整える具体的な手段として、Webアクセシビリティへの取り組みが強く求められています。

障がい者や高齢者のための取り組みなの?

結論から言うと、Webアクセシビリティの対象は障がい者や高齢者に限られません。健常者を含む「すべてのインターネット利用者」に大きな恩恵をもたらすものです。

一見すると「目や耳が不自由な方やシニアのための特別な対応」と思われがちですが、人間は誰しも状況や環境によって、一時的・状況的な制約を受けます。Webアクセシビリティは、そうしたあらゆる場面での不便を解消するために機能します。

Webアクセシビリティがあらゆる人に役立つ具体例

  • 屋外や移動中の利用(環境的要因)
    晴れた日の屋外で画面に太陽光が反射して文字が見えにくい場合でも、コントラスト比(文字色と背景色の差)が十分に確保されていれば快適に閲覧できます。また、電車内など音が出せない場所では、動画の字幕(キャプション)がすべての利用者に役立ちます。
  • 一時的な怪我や体調不良(一時的要因)
    利き手を骨折してマウスが握れないときでも、キーボードだけでスムーズにページ内を移動・入力できれば操作を継続できます。
  • 入力や操作のストレス軽減(ユーザビリティ向上)
    タップしやすい十分な大きさのボタン、エラー箇所が一目でわかる問い合わせフォーム、リンク先の内容が具体的に伝わるテキストなどは、Webサイトを訪れたすべてのユーザーの離脱を防ぎ、利便性を高めます。

「誰かのため」ではなく「すべての人のため」のWebサイトへ

Webアクセシビリティに配慮した設計は、UI(ユーザーインターフェース)やUX(顧客体験)の改善そのものです。HTMLの正しい構造化や適切な代替テキスト(alt属性)の設定は、検索エンジンのクローラーにとっても理解しやすいページとなり、SEO(検索順位向上)やGEO(AI検索での引用性向上)にも直接寄与します。

Webアクセシビリティは、一部の限られた人のための特別な施策ではなく、「誰もが等しく情報にたどり着け、サービスの成果を最大化するための基本品質」です。

Webアクセシビリティとは、いろいろな人が情報へアクセスできるようにすることをいいます。

企業のホームページでも対応が必要なの?

公的機関に限らず、民間企業であってもWebサイトのアクセシビリティ対応は必須となっています。

日本国内では、2012年の国連「障害者権利条約」批准後、2013年に障害者基本法が改正され「障害者差別解消法」が制定されました。 さらに、2021年5月に改正障害者差別解消法が成立し、2024年4月1日に施行されました。これにより、これまで民間事業者に対して「努力義務」とされていた「合理的配慮の提供」が「法的義務」へと引き上げられました。

現代において、企業のWebサイトは情報発信やサービス提供の重要な窓口です。そのため、Webサイトにおける情報バリアフリー化も、この「合理的配慮」の一環として強く求められるようになっています。

対応の基準となる「JIS X 8341-3」と「WCAG」とは

「合理的配慮の提供」やWebアクセシビリティの確保にあたって、具体的な合格ラインとなる明確な基準が存在します。それが日本産業規格である「JIS X 8341-3:2016」と、そのベースとなっている国際基準「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」です。

これらのガイドラインでは、Webサイトが満たすべきアクセシビリティの品質を、以下の3つの「適合レベル」で定義しています。

適合レベル 概要と対応の目安
レベルA
(シングルA)
最低限満たすべきアクセシビリティの基準。これに適合していないと、情報にアクセスできない、またはシステムを利用できないユーザーが存在する可能性が高いレベルです。
レベルAA
(ダブルA)
【★多くの公的機関や企業が目標とする標準レベル】
欧米などの法律やポリシーでも推奨されている世界的な標準レベルです。レベルAとレベルAAのすべての達成基準を満たす必要があります。
レベルAAA
(トリプルA)
より高度なアクセシビリティ基準。サイトの性質(動画や高度なデザインなど)によっては、すべてのコンテンツで達成することが非常に難易度が高いとされるレベルです。

Webアクセシビリティに見られる誤解

「うちの会社には関係ない」「デザインが悪くなる」など、Webアクセシビリティへの対応を進める上で、以下のような誤解がよく見られます。これらの誤解は、正しい情報バリアフリー化の推進や、JIS規格への適合を目指す上で大きな妨げになります。

良く見られるWebアクセシビリティにまつわる誤解には次の様なものがあります。いずれも、真のWebアクセシビリティの推進の妨げになっています。

誤解 1
制作会社に指示してあるから大丈夫

指示を出していても、実装段階の解釈やページ担当者によって品質に差が出ることがあります。制作側にJIS/WCAGの専門知識があるか、客観的な品質チェック体制があるかの確認が重要です。制作会社を過信してはいけない例

誤解 2
制作部門だけが対応すればよい

Webアクセシビリティは、制作部門だけで完結するものではありません。発注、企画、設計、デザイン、実装、運用、情報発信、問い合わせ対応まで、会社全体の判断と仕組みに関わります。継続的に品質を保つためには、担当者任せにせず、組織として取り組むことが大切です。参考:プログレスレポート

誤解 3
取り組むとつまらないデザインになる

実は、ほとんどのアクセシビリティの問題は、見栄えに関係なく改善可能です。規格の知識とデザインの引き出しによって、魅力的なデザインを維持したまま解消できます。

誤解 4
すでにしっかり取り組んでいる

第三者による評価はされていますか?読み上げ対応だけが対策ではありません。専門家の目を通さないと見えてこない課題は多く、客観的な品質評価はプロジェクトを進める上で必須です。

誤解 5
我が社には関係無い

もっとも恐ろしい誤解です。何らかの障害のある人は、世界人口の約16%に達するとされています。障害のある方とない方を、明確に分けて考えられるわけではありません。年齢、体調、利用環境などによって、誰もが情報を得にくくなったり、操作しにくくなったりすることがあります。スーツケースを運ぶとき、バリアフリーの街は有り難いものです。

誤解 6
自分には関係ない

「大切なことですね」と感心するだけでは、アクセシビリティは進みません。自分には関係ないと思った瞬間に、見えない困りごとは見えないままになります。アクセシビリティは、誰かの善意に感動する話ではなく、自分の行動を変えるための取り組みです。

Webアクセシビリティに対応するには何をすれば良いの?

Webアクセシビリティを確保するためには、単に「音声読み上げソフト」や「文字拡大ツール(オーバーレイツール)」をサイトに後付けするだけでは不十分です。 本質的な対応を行うためには、自社のWebサイトがJIS規格(JIS X 8341-3:2016)およびWCAGのガイドラインに沿って正しく設計・構築されているかを確認し、改善していく継続的なプロセスが必要です。

具体的には、以下のステップで進めていくのが確実です。

  1. 方針の策定:自社サイトの対象範囲と、目標とする適合レベル(例:レベルAA準拠)を決定する。
  2. 現状の診断・検査:ツールによる自動チェックだけでなく、専門家による「目視検査」を実施し、不適合箇所を洗い出す。
  3. 修正と実装:検査結果と修正案に基づき、ソースコードやデザイン、コンテンツを改修する。
  4. 運用と維持:サイト更新時にもアクセシビリティ品質が低下しないよう、社内ガイドラインの策定や担当者研修を行う。

インフォ・クリエイツだからできる、ワンストップの伴走支援

インフォ・クリエイツは、日本国内で最初に認められたWebアクセシビリティ検査分野の国際規格「ISO/IEC 17020:2012」認定機関(JAB認定機関)です。 当社では、現状のサイトを厳密に検査して「不適合箇所の一覧」をお渡しするだけでなく修正案までご提示します。

方針策定から、客観的な第三者評価としての「検査証明書」の発行、そして運用フェーズにおける社内研修(ウェブアクセシビリティ検定)まで、お客様のアクセシビリティ対応が途中で挫折しないよう、最後まで伴走いたします。

よくあるWebアクセシビリティの問題例

Webアクセシビリティの対応を進める上で、「見た目は普通なのに、実はユーザーにとって大きな障壁(バリア)になっている」というケースが多々あります。

たとえば、以下のような問題は、多くの企業サイトで頻繁に見つかる代表的なNG例です。

  • 「代替テキスト」の欠如や重複:画像の内容が音声読み上げソフトに伝わらない、または二重に読み上げられてしまう。
  • 文字色と背景色の「コントラスト比」不足:高齢者や屋外でのスマートフォン利用時に、文字が読み取れない。
  • 「キーボード操作」でのメニュー展開不可:マウスが使えない環境のユーザーが、目的のページに遷移できない。

これらはほんの一例です。自社サイトに潜む「見えないバリア」に気づくためのチェックポイントとして、より具体的な問題例と改善の方向性を以下のページにまとめました。サイト運用やリニューアルの際のご参考になさってください。

FAQ(よくあるご質問)

    • A: 年齢や障害の有無、利用する環境(PC、スマートフォン、音声読み上げソフトなど)にかかわらず、誰もがWebサイトで提供されている情報や機能を問題なく利用できる状態(またはその配慮)のことです。
    • A: すべての利用者に正確な情報を届けるWebサイトの本来の役割を果たすためです。利用者の利便性向上やSEO(検索エンジン最適化)効果が得られるほか、企業の社会的責任(CSR)の果たしや法的要件への対応という観点からも重要性が高まっています。
    • A: いいえ、障害のある方(視覚・聴覚・身体機能など)だけでなく、加齢により見えづらさを感じている高齢者、怪我で片手が使えない一時的な障害のある方、日差しの強い屋外でスマホ画面を見ている方など、すべての利用者が対象となります。
    • A: 画像に内容を説明する代替テキスト(alt属性)を設定する、マウスを使わずキーボードだけで操作できるようにする、文字と背景のコントラスト比を十分に確保する、フォームの入力項目に適切なラベルを付けるなどの対応を行います。
    • A: いいえ、適切な設計を行えばデザイン性を損なうことなく対応できます。むしろ視認性や操作性が向上するため、結果として誰にとっても使いやすく洗練されたWebデザイン(優れたUI/UX)に繋がります。
    • A: 国際規格である「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」や、それを基に制定された日本産業規格「JIS X 8341-3」があります。企業のWebサイトでは一般的に「JIS X 8341-3 のレベルAA」の基準を目指すことが推奨されています。
    • A: 日本では「障害者差別解消法」により、事業者に対して障害者への合理的な配慮や環境整備が求められています。Webサイトは社会的インフラとしての役割が大きいため、法的な観点からも積極的な対応が進められています。