Webアクセシビリティに関していただいた質問への答えをご紹介します。
Q :Webアクセシビリティとは何ですか?
「アクセシビリティ(Accessibility)」が日本で余り馴染みの無い用語(英語)なので出る質問です。「近づきやすさ」「アクセスのしやすさ」という意味があります。「アクセシビリティ」を馴染みのある「バリアフリー」に置き換え、「Webバリアフリー」であれば少し分かりやすいと思います。 身体が不自由な高齢者や障害者がWebを利用するのに支障が無いようにWebを制作し公開することと理解してください。具体的には以下の通り- Webのテキストを音声で読み上げるブラウザを利用する視覚障害者のために、画像や写真などを説明するテキストを挿入する。
- 視力が弱くなった、色の識別が難しい利用者のために、背景色を利用者が変えられる、または文字や画面を拡大してもレイアウトが崩れないようにする。
- 身体が不自由でマウスを使えない利用者のために、キーボード操作だけでも利用できるようにする。
Q :ウェブアクセシビリティの重要性について説明してください。
Webアクセシビリティとは何かを理解いただければその重要性は分かっていただけると思います。ご質問は、Webアクセシビリティで無い場合に生じる問題の重要性についてと思います。 Web管理者が意図せずに、一部の利用者を差別する結果になる場合があります。次はこの問題が顕在化した事例の一部です。- オーストラリアで開催したオリンピックのWebが、アクセシビリティに対応していなかったため、視覚障害者が差別をされたと訴えた。結果はオリンピック委員会が敗訴して修正を命じられた。
- 米国の通販サイト(target.com)を利用しようとした視覚障害者の学生が、登録に求められたCAPTCHA(コンピュータと人間を判別するためにわざと不明瞭にした画像)の識別ができず利用できなかった。この訴えは集団訴訟となり多額の和解金を支払う結果となった。
- 緊急避難に関する情報、公平性、透明性が重要な情報が、もし一部の利用者に伝わらなかった場合を考えてください。
- ある口座のWebサイトで見つかった実例:視覚的には口座番号と残高が分かれて表示されていた。しかし、システムで吐き出した契約番号と残高の数値は分かれていなかったため、「残高は12億5千6百万円です」と音声読み上げしていた。
Q :私が管理するWebサイトのアクセシビリティ対応状況がわかりません。どのように調べたらよいのでしょうか?
Web管理者から出される最も多い質問で、答えるのに苦労する質問でもあります。 普段使うことの無い音声読上げブラウザを使って調べる。マウスを使わずにキーボードだけを使って調べる。これは簡単な様で大変難しい調べ方です。 研究会や研修会で聞いた笑えない事例をご紹介しましょう。- Webアクセシビリティは視覚障害者への影響が大きい、それなら視覚障害者自身に確認してもらおうと視覚障害者にお願いしました。
- 依頼された視覚障害者は大変です、時には意味不明の文章を聞かされ、別のウィンドウが開いた通知も受けられず待つことしばし。
- そもそも何が悪くて何が正しいのか分からないままにWebを確認することになるのですから大変です。
- 数例の結果を聞きましたが、全て視覚障害者が怒り出したそうです。
Q :アクセシビリティ対応の手本となるようなウェブサイトがあれば、具体的に教えてください。
アクセシビリティ方針を策定し検査結果を公表しているWebはお手本となります。 Webサイトのサイト内検索で「アクセシビリティ」と入力して検索すれば、そのWebサイトの対応状況は分かると思います。次の事例は平成26年3月時点です。- 中央省庁では、経済産業省、総務省、防衛省などが参考になります。
- 企業のWebでは、キヤノン、沖電気が参考になります。
Q :私はWeb制作者です。そもそも、高齢者や障害者のために行うわけですが、Web制作者にとってWebアクセシビリティ対応は何か利点がありますか?
Webアクセシビリティは高齢者や障害者のために行うのではありません。さまざなWeb利用機器への対応性を確保するために行うのです。 Webアクセシビリティの検査をすると、Web制作者の技術力を評価することができます。少し事例で紹介しましょう- 世に出て未だ10年ですが、この間のWeb技術は著しい進歩をしました。現在は、HTML5が中心です。既に多くの要素と属性が非推奨となっているのですが未だ多くの古い非推奨タグが見つかります。
- 非推奨タグを使っても不適合とはなりませんが、非推奨タグを使うことでWebアクセシビリティ対応問題を発生させていることが検査で見つかります。
- 視覚的に強調させたい用語を「bタグ」で太文字とした。これでは音声読上げブラウザでは強調した用語とは伝わりません。「strongタグ」で強調する必要があります。
- 見出し、または強調したいので、「font」タグでフォントサイズや色を指定した。この作り方もブラウザの文字拡大に対応しないなどの問題となります。
- インターネット黎明期からWebを制作していたベテラン制作者には頭の痛いのがWebアクセシビリティなのでしょう。
Q : 現在、何の対策もしていません。管理対象のウェブサイトのアクセシビリティを向上させるには、どのような手順で進めればいいでしょうか?
アクセシビリティの専門家に把握する検査を依頼しましょう。 現状把握の検査は、機械的な検査で簡単に全ページを確認できます。次に主要ページを目視検査します。 検査結果を受けて、改善する計画を策定します。- 現在の規格は2010年に改定されましたが、既に大量なページを公開していると思います。
- 古いページも含め全ページを、改定された規格に適合させるのは予算的にも時間的にも難しいと思います、
- 検査結果で見付かった問題の重要性、改善の緊急性、予算を考慮して改善する不適合箇所を、直ぐに改善をする、次期更新時に改善するなどを定めます。
- 機械的な検査で見つかった不適合は機械的に改善できるでしょう。
- 目視検査で見つかった不適合は人が確認して改善作業が必要です。
- CMSを利用している場合、CMSを利用して改善します。
- テンプレート、CSSそしてJavaScriptなどは制作会社が改善することになると思います。